---
性懲りもなく、カセットMTRのジャンクを手に入れてしまった。今回はTASCAM 414という機種で、電源アダプタ無し、動作未確認、キャリングバック付きで324円であった。
見つけた時は、へーと思いつつも、MTRは既に2台持ってるからという事で買わなかったのだが・・帰宅途中でやっぱり、と思い直して、引き返して買ってしまった。300円だし。
本機の為に電源のセンターマイナスの12Vアダプタが必要になったので、手持ちのセンタープラスの12Vアダプタで使うべく、クロスケーブルを作って接続した。通電したところ、カセットメカも生きており、録音再生は一応問題なく、実用に耐える音質を保っていた・・・様にみえたのだが、問題を発見・・・
マスターのフェーダーが上がっているときに、各チャンネルのフェーダーをゼロまで下げても、入力をTAPEではなくOFFにしても、テープからの音が若干音が漏れるのである。手持ちのYamahaのMT-50もCMX-100IIもそんなことはないのだが、これは若干漏れるのである。元々そうなのか、経時変化でこうなったのかは解らないが、ちょっと残念であった。静寂からゆっくり音量を上げてゆく、あるいは音量を下げて静寂へ向かわせる場合、音が残ってしまう。完全にゼロにする場合はマスターも下げなきゃいけない。
それでも、若干漏れるだけであれば、そういう特性の機械であるとして使いこなせばよいのだが、問題なのは、ボソボソと低音が歪んだ様なノイズが付随するのであった。マスターのレベルが高いと、音漏れ以上に、このボソボソが、とても目立つのである。これはちょっと使いたくない、ハズレを引いた気分。フェーダーを上げれば全体の音量のマスク効果でボソボソは隠れるのか聞こえなくなるのだが、絞ると途端にボコボコと耳につくのである・・ なんだこりゃ・・
---
やっぱり300円のジャンクだなー、と思いつつ、なんか悔しいので、ダメ元で分解して原因を探ってみることにしたのだが・・
残念ながらこの機種のサービスマニュアルはネットに落ちてなかったので、あてずっぽ、勘だけですすめる事にする。オシロなんかがあれば、ノイズ源を探れるのかも、と思いながら・・・
構造は比較的単純で、簡単にバラせる・・
この手のMTRはどれも似たような感じで素人でも整備はしやすいのだが
眺めていてもノイズの原因はつかめない・・・
メカは完動、ベルトもまだ使えそうなのでそのまま・・
このメカはYamahaのMT-50と同等品みたいだ・・
録音・電源系の基板
20世紀末の商品であり、台湾生産、という事でケミコンなどは怪しいのが混じってる・・
ミキサー側の基板・・真ん中の立ってる基板は、恐らく録音、再生信号のバスバーみたいなものだと思う・・
入出力のフェーダーにガリはないのだが、他のトリムやポットが一部ガリッてる・・
5つのLEDを光らせる、IC駆動のVUメーターが付いているのだが、ボソボソ音はこのレベルメーターの点滅と同期してる感じがした。ICは音声信号が入力されるので、こいつが信号ライン系を揺すっているのかもしれない、と推測し、レベルメーターに関係する電源ラインのケミコンを交換してみたり、メーターICの電源-GND間にピン直でケミコン追加してみたり、メーター系のGNDピンを直接ビニル線でコネクタまで配線してGNDライン強化してみたり・・したのだが、残念ながら、全然効果が無かった・・
ケミコンなども日本製でなさそうなのが色々使われている・・容量抜けてるのがあるのかも、なんて事で、なんか変えてみたい気もしたのだが、一方300円にそこまでする価値があるのかどうか・・
更にミキサーの要所のオペアンプの電源-GND間ピン直でケミコンを追加してみたりもしてみたが、これも効果がなかった・・ そもそもノイズ源は音声なのだが、どういう経路でボソボソと言うのか・・
---
要所の電源-GNDにケミコン増量しても、メーターICのGNDを強化してもノイズが出る、という事は、それ以外の原因、という事でもある・・ドラムやベースがドンドンと鳴るタイミングでLEDメーターが点灯し、ポコポコとノイズがのる・・
やっぱGNDが揺すられてるのでは、と考えると、メーター系のGNDライン強化は効果なかったので、さらに基板の外が原因なのかも・・と考え始め・・ミキサーの基板のGNDと、本体の録音、電源系基板のGNDをビニル線で繋いでみたら・・ノイズが小さくなる事に気がついた・・・!
と言うことで、現状のGNDラインを見ると、この基板の端のコネクタのついた細いワイヤーの束、電源、GND、各種コントロールライン用がまとまっているのだが、うちGNDラインはたった1本、信号ラインと同じ細い線が使われているだけ・・・
ミキサーの入力アンプ、イコライザ、ミキシングアンプ、ヘッドフォンアンプ、LEDメーターが載ってる、つまり電流が少なからずながれ、変動の多い基板のGNDラインが、信号線と同じ細いワイヤー・・基板上の部品劣化などで揺すられやすくなっているのかもしれないが、原因はこのワイヤーではなかろうか・・
という事で、ミキサー基板のGNDと下側の録音・電源系のGNDを繋ぐべく、はるかに太いビニル線を用いて引き出し、コネクタで接続する改良を加えてみた。
という事で、ミキサー基板のGNDと下側の録音・電源系のGNDを繋ぐべく、はるかに太いビニル線を用いて引き出し、コネクタで接続する改良を加えてみた。
左側が改造で追加したGNDライン
下の写真の右端、基板上のコネクタのGND端子は、細い黒のワイヤを経由してGNDのランドに接続されている。このGNDランドに穴を開けて、遥かに太いワイヤで引き出し、ミキサ側基板のGNDに接続、基板間のGND接続を強化したのである・・
結果、ボソボソ音のレベルは、かなり低くなった。
改造で追加したGNDライン
残念ながら完全にゼロではなく、マスターフェーダー最大、モニターVR最大だと、やはりちょっとだけボソボソ聞こえる。しかし、改善前のボコボコと比べたらはるかにまともになった。
これじゃ使えないなー、というレベルから、まぁ使ってもいいか、というレベルになった・・ ここまで、随分時間がかかってしまった・・
---
手持ちのYamahaのMTRはこの機種よりは古いものだが、ノイズも音漏れも気にならないので、この414の症状は、どこかの容量が抜けてるとか、経年変化かもしれないが、設計、実装的にもあまり良くない商品ではなかろうか、と思う。カセットMTR末期に近い頃の合理化された機種だからかもしれないけれど・・
なにせ、あんな細いワイヤ1本でGND接続してるのだから。
---
という事で、なんとか使える様になったのでテストを兼ねたのが前記事のこのビデオであった・・
またガラクタを増やしてしまった・・・
見た目はカッコイイんだけど、けっこうボロったのでメイン機になることはないけど、なにせカセットMTRはもはや生産されていないので、こんなものでも貴重なのである・・
あんまり使わないんだけどね・・
おしまい