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memo:ジャンクなNikonの実体顕微鏡を入手してしまったと言う話
先日、某ハードオフで、いかにも、工場かどこかの検査工程で使われていたものが持ち込まれたという風情の、ちょっとスレた、ゴツい台座付きの実体顕微鏡がレジ前に転がされていた。税込み3240円という値札がついていた・・
実体顕微鏡は低倍率だが両眼で対象物を立体視できる、言わばハイエンドのルーペみたいなもので、持っていれば便利な事もあるが、しかしだからといって一家に一台というものでもなく、明確な使用目的を持たない人間ではなかなか買いにくいものでもある。前からちょっと欲しいとは思っていたが、だからと言って積極的に購入を検討するほどの必要性を持っていなかった。
ということでチラっと見ただけで触らずにスルーしたのだが、帰宅してちょっとオークションなどを調べて見たのだが、実体顕微鏡はけっこう人気があって、中古でも結構良い値段が付いているし、入札も盛んの様だ。数千円ではなかなか買えるものではないらしいのだ。
大きな架台は置き場所に困る、とても重い、と言うことで2週ほど売れ残ってるのを横目に見つつ様子をみていたのだが、置き場所は後から考えればいい、オシロの時みたいに床に転がせる台座とか作るのもいいかも、などと、買わずに後悔するより買って後悔する事にした。三千円だし。
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という事で入手して清掃という程度の整備をしてみたのだが、アイピースや対物レンズ、プリズム表面などは染みの様な汚れが見られたが、外から拭ける所は、アルコール拭きなどを行い、完璧ではないが観察には問題ない程度にした。アイピースも、いかにもどこかの現場の実用品だったと言う証拠とも言える拭き傷や染みが残っているが、観察に影響が出る程でもなかった。
問題が出たのは架台の上下のピント合わせ機構で、当初大変渋く、パーツクリーナーを掛けたり、分解してみたりして上手く動くようになった・・と思いきや、突然上下動が全く動かなくなってしまった。スライド部がノブでは全く動かず分解も出来なかった。やはりジャンク、万事休す、となりかけたのだが、乱暴だがハンマーで叩いて無理やり外した。アリ型というか台形というか、スライド部の摺動面が傷んでいたのか、食いつきで動かなかったようだ。
このスライドする台形部材の取り付けボルトの締め付け加減が非常に微妙な感じで、普通に軽く閉めると動かなくなる・・正式にはすり合わせをきちんと取る、シムなどを入れてクリアランスを調整するのだろうが、道具も知識もなく、取り付けボルトをガタが出てるか出てないか、程度の、ボルトとしては全く閉めてないと言える程緩く調整して動作する様に調整した。将来振動などでボルトが閉まってくれば固くなり、逆に緩んでくればガタが出る、という不安定さが内在する事になるのだが、業務使用するわけでもなく、次にトラブルが出た時に考えることにする。3000円だし。
鏡筒を固定するローレットネジが欠品していた。また鏡筒側のネジが当たる部分周辺の溝が若干削られ気味になっていた。このネジがないと台座と本体は重力で載っているだけで固定されずガタガタで不安定になるのでこのネジは必須。手持ちのM3 ネジではスカスカ、M4ネジは入らないという事で3.5mmと予想してネジを買ってきが、ビンゴの様である。 手持ちのジャンクのなかに3.5mmの真鍮のローレットのナットみたいなものが有ったので、これを3.5mmネジに締め込んで、手で締め付けられるローレットねじの代用とした。ネジの先は丸まった鉛筆の先、程度に削って丸めておくと、鏡筒の溝にジャストミートして軽い力で閉めてもガタツキが無く固定出来る様である。
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というわけでなんとか使える様にしたのだが、問題の置き場所は、PCデスク横にプリンタ台として置いていたスチールラックの上とした。エレクター(モドキ)の頑丈なラックなのが幸い。なにせ、片手で持ち上げるのは無理というか、危ないぐらいの重さがあるから。
卓上には長すぎる水平のアームは、本来の使い方ではないとは思うが、アームの金具を逆側に使うことで、手前側の張り出しを少なくしてなんとか台の上に観察視野が入る様にした。
この鋳鉄の台座がとても重たいのである。まるでバーベルのウエイトそのもの。
照明はとりあえず自在アームに挟んだLEDライト・・
この機械は型番の書かれた銘板などがどこにもなく、Nikonとシリアル番号が印刷されたシールが一枚貼られているだけなのだが、どうも形から言うとSMZという機種らしい。結構スレてはいるが、つまり一応今でも新品を買える現行品という事になる。ジャンクでこれほど格安で出てなければ、まず買うことはなかったであろう。不思議な巡りあわせであると思う。
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入手してから何に使おうなどというのは本末転倒なお粗末な話だが、とりあえず、音楽のためのムービー作り、ムービーのための音楽作り、という何時もの趣味のネタになるかもしれないと、ビデオ撮影をしてみよう、と思いついて、適当な端材などで撮影用治具の試作。いわゆるコリメート撮影を行う治具である。
普通のデジカメやカムコーダー用で作るのはカメラの固定が難しそうだが、小型軽量かつ棒状のQ3HDなら簡単ではないかと言う事でこのような物を作ってみた。
なんとなくこんな感じ。見てくれも使い勝手も良いとは言えないが、なんとかカメラを保持する事ができた。 光軸と、アイピースとカメラレンズの位置合わせはとても微妙で、少しでもずれるとブラックアウトする。光軸が合ってるのは当然として、アイピース表面から近す過ぎてもダメ、遠すぎてもダメ。人間の瞳(絞り)にあたる位置にカメラのそれを合わせる感じ。このNikonのアイピースでは、アイピース端面からQ3HDの間の距離は、図らずも工作に使った板切れ1枚分(10mmから11mm程度)の距離で上手く行った。
このアダプタをアイピースに嵌め込んでカメラを輪ゴムで止めるという寸法。工作精度や重量バランスの問題で、Q3HDは天地逆にしないとアダプタが微妙に傾いで光軸がズレてブラックアウトしてしまう。
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と言うことで、いい加減だがなんとか動画撮影が出来る様になったので、どんな絵が撮れるのか試してみたのが、冒頭のビデオ、という事であった。
実体顕微鏡は元々両眼で立体視するものであり、小さなものがものすごく奥行き深く、あるいは高低差を感じる、とても立体感を伴って見える。単眼のルーペで見るのとは別次元の見え方がする....これはビデオで撮影しても再現はできないのが残念ではある。
冒頭ビデオを白黒作品にしたのは、気分的な問題が主なのだが、照明がプアで暗めに撮れてしまい、また普通のLEDライトという事もあり色味があまりよくなかった事に対するごまかしでもある。 ライティングは今後の課題かな。
この時計は15年程前に買ったもので、裏がガラス張りでメカが丸見えなので面白い素材になるか・・と思ったのだが、自動巻きローターやその機構でメカの大半が良く見えない機械なので、メカ部は絵的にはイマイチではあった。
ビデオには撮らなかったが、アンクルの爪とガンギ車の部分を拡大してみると・・ たいして使っては居ないが経年変化でオイルが劣化したスラッジの様なものがゴミとしてまとわりついているのが見えた・・やはり言われているように機械式の時計は定期的なメインテナンス、分解洗浄給油が必要なのだな、という、肉眼では見えないそういう物が見えてしまうのである。