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Wednesday, November 29, 2017

濁る楽器用レモンオイルのナゾ

memo :
 楽器屋でギター用などとして売られているレモンオイルとは何なのだろうかという疑問と考察・・ 汚れ落としに抜群の効果はあるが、ヤニの様な物質が溶け込んでいるので油断は禁物、というお話
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楽器屋でギターなどの手入れ用として売られているレモンオイルという商品がある。


この楽器用レモンオイル、私は楽器用というより、色んな物の汚れ取り用としてよく用いていた。
一番効果を実感するのが、値札、商品説明、注意書きのシール、テープなど粘着テープを剥がす時である。商品にシールが貼ってあるものは多いが、ご存知の通りシールの中には非常に剥がしにくく、ネトネトとした接着剤が残って処理が厄介な事がよくある。

残ってしまうと、乾拭き水拭き、洗剤、アルコールでもなかなかうまく取れない、ゴシゴシしてると、汚れが広がったり、プラスチック製品などキズを付けてしまう、有りがちなパターンにはまる。

ところが、あの独特のベタベタ、粘着が、このレモンオイルを使うと、簡単にスッキリとよく落ちるのだ。揮発性が高いので拭き取るとすぐに乾き、また特に跡なども残らない、とても優れたシール剥がし剤、なのである。

マジックなんかの書き込みもよく落ちる。そして、それほどの効果がありながら、樹脂などの素材に対する攻撃性も余り感じられない。

そういう特性があるため、このレモンオイルを、ジャンク機材などの清掃にもってこいの便利な清掃用の溶剤として常用しているのだが・・・

1. 濁るレモンオイル


・・・・ こいつは使って量が減ると底になにかが沈殿してきたり、濁ったりするのである。
大抵どこの楽器屋にも置いてあるこのブランドの商品を使ってきた。

湯水の様に使うわけではないので結構長持ちするのだが、使用して減ってくると、なにやらネトネトの、”はちみつ”の様な粘度のトロリとしたものが底に溜まってくる。オイルに溶けないなにかが分離してくるのか、この物質が溜まったオイルの容器を振ったりするとオイルが濁って元に戻らない・・・

これは何なのだろうか・・・ という疑問が生じる。

2. 濁り、沈殿物は松脂の様にベタベタでやっかい

以前、オイルを数滴皿の上に垂らして放置し、乾かしてみた事があった。
オイルが飛んだ後は、なにやらオレンジ色の粘つく物質が残る事は確認できた。

今回濁っってしまったオイルの容器からオイルを抜いて、残った沈殿物をかきとって調べてみた。

ややオレンジ色の、非常に粘着性のある、手で触るとベタベタしたタール状の物質。
松脂や木の樹液の様なベトベトで、粘着してまとわりつく、布等で拭き取っても伸びるだけでまとわりついてしまう感じ。
つまり、濁り、沈殿が生じた楽器用レモンオイルを楽器清掃などに使う場合、その濁り沈殿物を楽器に付けない様に気をつけないと、却って楽器を汚してしまうことになり、それはレモンオイルに溶けない物質だから、拭き取りに難儀すると思われる。後述の通りアルコールで拭き取る必要があるが、楽器に染み込むと完全除去は難しいのではないか
この物質は、元のレモンオイルにも溶けず、レモンの精油の主物質とされるリモネンにも溶けない。 (濁ったオイルを試薬のリモネンで薄めても沈殿、濁りは取れなかった)


3. 沈殿物はエタノールに溶け、濁ったオイルは少量のエタノールを加えると元に戻せる・・・

 この物質は、本当に松脂、あるいは半田のフラックスみたいな、滑り止めに使えそうなネバネバ感。そういうこともあり、エタノールなら溶けるのではと思いついたので、沈殿物が付着した容器に少量入れてみたら・・・


容器にこびりついていた粘度の高い物質が、あっけなく完全にサラっと溶けた!
つまり、この沈殿物はオイルには不溶だがアルコールには溶けるものなのだ・・・

という事で、今度は濁ってしまった楽器用レモンオイルにごく少量のエタノール(無水)を入れてみた。容器の口からスプレーで数回シュッといれた程度だったのだが・・・


あっという間に濁りが取れて元の透明なオイルに戻った!

4. 考察・・・ 楽器用レモンオイルは添加物入りの何かのアブラ

なぜ使って量が減ると濁ったり沈殿したりするのか・・・

ヤニ状の沈殿物は、オイルにも、試薬のリモネンにも溶けなかった。しかしアルコールには完全に溶けた。おそらく、添加物としてこれを油に混ぜるために、アルコールで溶いて混ぜているのではないか、と推理する。

だいたい、レモンオイルは普通にひと瓶使い切るには結構の月日がかかる。その間に徐々にアルコール分が揮発してゆき、オイルに溶け込めなくなった分が沈殿しているのではないか。
そう考えると、月日が経ち減ってくると濁ったり沈殿するという現象の筋が通る。

レモンオイル、と呼ばれているがリモネンはあまり含まれていない

楽器用レモンオイルには、ナチュラルだのピュアだの書いてあるけれど、100%レモンから取ったオイルでないことは何となくわかる。

ややこしい話しだけど、本当にレモンから作った食品として使用できるレモンオイルもある、らしい。
しかし、楽器用として売られてる物は、それとは全く別物だろう。
家具用として売られているものもある。楽器用と何が違うのだろうか。ナゾだらけ。

以前から、レモンのオイルだから、楽器用レモンオイルもリモネンが主剤なのだろう、と勝手に思っていた。レモンの香りもする、それはリモネンだから、そう思っていた。

レモンの精油である”リモネン”、limonene と書くようにレモン由来そのものの名前を持つ物質。
レモンやオレンジの皮に含まれる油脂で、汚れ落としに抜群の効果があるもの。
有名な話として、オレンジ由来の洗剤がニューヨークの地下鉄の落書きを消し去った、なんて話もあるが、あれはリモネン由来の洗剤と聞く。
 
そういう知識から、楽器用レモンオイルの主剤はそのリモネンではないか、それが上述の様な抜群の清掃効果をもたらしている理由ではないか、と想像していたのだが、どうもこれは私の早合点だった。

冷静に考えると、もしリモネンが多量に含まれていたら、スチロール樹脂に対してそれを使うと、たとえ少量でもあっという間に表面がベタベタに溶けて曇ってしまうはずだ。 

しかし、楽器用レモンオイルは、CDのケースを拭いてみても、発泡スチロールに掛けてみてもほとんど即効性はない。拭き取ればそれで終わりで、少なくともリモネンは大量には含まれていないのではないかと思う。


ラベルの能書きと沈殿したヤニの様な物質に対する疑問

オイルのラベルに書いてある”木材の油分を補う”という効能を詠うための添加物を入れている、と言う事も考えられる。油分を補うとか潤いを与えるみたいな効能には、正直期待できない。

オイルを吸わないものに使う場合は、表面を拭き取れば残渣はほとんど何も残らないのは経験上知っている。しかし実際沈殿物が出来る程の何かが溶け込んでいるわけだから、木材などに染み込んだ場合、その物質は吸収吸着され木材に入り込み残ってしまうはずだ。

木材は水分のやりとりは空気の湿度の具合で起きると思うが、油分のやりとりなどは起こり様もない。 商品ラベルに書いてある効能、油分が失われるからオイルを入れる、という発想は考えてみると不合理である。単なるセールストークではないのか。

レモンオイルのレモンを印象づける着色用も兼ねて、ヤニの様な何かを溶け込ませてるのではないか。ハンダ付け用フラックスも同様な黄色いような色をしている。

その香りも試薬のリモネンよりきつい匂いので、レモンを意識させる香料も入れていたりして・・・ とにかく、ナチュラルだのピュアという言葉は真に受けない方が良い。
メーカーは成分表など出していないので、何が含まれているのか皆目わからない、冷静に考えてみると実に怪しいオイルである。

そのくせ楽器用レモンオイルは結構な値段がする。150ccで千円以上とか。汚れ落としに効果は抜群ではあるが、その他の効能は売るための方便、ナチュラルとかピュアとか書いていながら人造合成物を売ってるわけだから、かなり儲かる商売なのだろうと思う。ラベルの説明書きや効能は単なるセールストークではないのか。

ギターメーカーのギブソン社やマーチン社は、レモンオイル使用を推奨していない、という話がある。

たまに使う程度で楽器を損なう程の害悪をなすものではないとは思うし、ギターのオイルを塗ったら困った事になった、という経験はまだない。しかし、今回わかったように、松脂のような樹脂が混ざっているとすれば、頻繁に木材に大量に吸わせる様な使い方をすると、その樹脂成分が木材に入り込み変色や変質を起こす事は想像に難しくない。 

従って、高級な、名のある名品にそういうオイルを使うのは好ましくないだろうとは思う。

5. 結論・・は出せないけど

汎用的な汚れ落とし用には便利に使える。特にラベル剥がしなど粘着剤には抜群の効能、値段は高いけど、持っていても損はない。油性の汚れやこびりつきが良く落ちます。

一方本来の用途とされるギターなどのギターの指板用、潤いを与えるとか油分を補うとかいう効能は真に受けちゃいけないと思う。

木材は水分が抜け乾燥し、セルロースが長い日時をかけて結晶化したりして音響特性が変わる。古楽器の響きがよいのはそういう理由があるらしい。そういう性質のある木材に、アルコールに溶かし込まれたヤニの様な物質が入ってるオイルを木材に吸わせるのは好ましくない気がする。
オイルは揮発するがヤニ状物質は残ってしまう。

だから、手工芸の楽器など存在そのものに価値のある楽器、二度と手に入らない名品や古楽器の類にはうかつに使わない方が良い。

普通のアマチュアが使う楽器の指板なんかはそうカリカリせずとも、汚れ落とし程度でつかうのは問題ないんじゃないか。汚れが落ちない方が、僅かな残渣が残るより害はありそうだから。
ただ四六時中ジャブジャブと吸わすのは良くない気がする。

でも、上等の材木のボディーに吸わすような事はしない方が良い。 

指板の手入れは年に一回ぐらいでよい、ミネラルオイル(ベビーオイル)がよいとかいう話もある。結局自己責任の世界・・・ ネットの意見ではレモンオイルでバッチリ、的なものと、ダメ、絶対と二分されてるわけだが、正直汚れ落とし以外の効能も見受けられず、しかし即座に害悪となる悪影響もない、長期的に見たら使わないほうがよいかも、程度の話なので大きな問題にもなっていない、どうでも良い話なのだろう。 楽器店や販売業者は売れれば儲かるからダメとは言わないだろうし、効能書きも嘘くさいのもまたユルい楽器業界だからかもしれない。

また楽器用として売られているものは幾つもある。メーカーによって違いもあるだろうとは思う。
結局なにが正しいとか良いとか考えても解らない。 ただ成分表、組成などは明らかにならんものか

ということで、これ以上考えても進まないので、これでおしまいとする。
おそまつさま


Monday, November 27, 2017

Today's Trinitron : KORG minilogue/MS-20mini/Volca beats



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解説

SONYのPVM-6041Q という6インチのプロ用トリニトロンモニターのジャンクを入手した。PAL/SECAM/NTSCいずれの信号にも対応したモニター。今更こんなものを、とも思うのだが、いかにも昔のビデオみたいな画像を作るビデオエフェクトに使えるのでは、など試してみたかった事もあった。
SONY PVM-6041Q

見ての通り、随分スレた個体で、あちこちにキズ、凹みがある。フロント下の保護バンパーみたいな金属も曲がってるし、CRTまわりのベゼルに打痕、本体裏もいかにも落としたかぶつけたような痕跡がみられ、バッテリー蓋もかなり擦れているという、いかにもビデオ撮影屋が現場で散々荒っぽく使ったという風情。700円だったのと、小型なので置いておけそう、という事で手に入れた様なものだが、スれてる割には至って正常に動作している。トリニトロンのカラー管であるが解像度は小型という事もあって高くないが、歪曲のなさや色相などはいかにもソニーのプロ用という事でナチュラルな感じ。


オシロ撮影用アダプターと同じような”ZOOM Q4 撮影用フード” を作って、Q3HDで撮影したビデオをそのままQ3HDのアナログ端子からこのモニターに映して、それをQ4で撮影してみた、というのが冒頭のビデオであった。(実は一つ前のビデオも同様の手法で撮影している)


版画用のシナベニアでCRTベゼルにかぶさる箱を作って、レンズ用の穴を開け、カメラ設置用のガイドを貼り付け、


反射防止、コントラストをあげる為に黒く色を塗ってみたのだが、


この手のカムコーダーの感度、露出は手動ではおこなえず、画面の輝度によっては電子シャッターの速度が早くなりすぎるのか、画面に黒く太い帯が現れて良い結果が得られなかったので、このフード内側に49mmのフィルター枠を接着し、NDフィルターなどを掛けられるようにした。


今更CRTもないとはおもうのだが、懐かしいTV風のボケた動画を作ることには一応成功したと思う。トリニトロン管なので、アパーチャグリルの縦線が写り、水平の走査線は映らない。水平の走査線が出たほうがテレビっぽいのだが、現実に特にカラー管はグリルやマスクの影は写っても走査線は見えない。ビデオエディタ Kdenliveにscanlinesという走査線風の影を作るフィルターがあるのだが、そういう画像は得られない。走査線は、もっと大型のモニターでないと見えてこないのかもしれない。

 アナログ入力なので、信号にわざとノイズを入れ、画面にノイズを入れたり、同期を乱したりと、昔の調子の悪いテレビの様な動画も作れそうなので、そのうち試してみたいと思う。

Thursday, November 23, 2017

今日の Roland M-120

memo: Roland M-120 ジャンク品を修理・整備したメモ
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RolandのM-120という1Uの12chのラインミキサーのジャンク品を入手。

またまた悪い癖が出てしまったのだが、一つ税込み千円、しかもこの時は改装とかで全品3割引きセールで700円だったからつい・・KORGのラックチューナーと一緒に買ってしまった。

Roland M-120

いかにもジャンクというスレた感じだが、一応電源も入り、動作もした。


しかし、チェックしてみると、M-120の方は1ch でパンポットが左に寄るが右に寄らないという症状があった。

ということで、いつもの様に治せるかバラしてみることにした。



ノブが沢山あるので外すのに手間がかかる。引き抜くだけだが、そこそこ力が必要なので、これ程多数あると素手でやると手が痛くなる。

ボリウムは全部2連同軸のもので、それぞれ別動作するもの。


この軸の長い、真鍮軸の2連ボリウム、おそらく同じ部品の入手は難しいと思われるので、そういう意味でこの機種は末永く使って行けるものではなく、このボリウムが壊れたらおしまいという機種である。1Uという狭いパネル上に多数のボリウムを並べるデメリットが、汎用品が使えない、代替えのない専用部品の採用、と言うことかもしれない。

基本単純なラインミキサーなので、おそらくボリウム以外壊れる所は無い。
つまり、この機種の急所はボリウムなのだと思う。ひとつ、かなり曲がった軸があったので、目立たないぐらいに修正はしておいた。落としたり、ぶつけたりした時に、ノブが突出してるので、痛みやすいのだろうと思う。


基板は複数に分かれているのだが




状態チェックや部品を取り外す為には、サブパネルに止められているボリウムのナットを全て外して、基板をシャーシから外す必要がある。構造は簡単なのだが、これだけ多数のナットを外す必要があるので手間がかかる。


目視点検してみたところ、パンの効かなかったチャンネルの該当ボリウムを見ると、2連のユニットに隙間が開いている。ノブを強くぶつけたなど外部から力が掛かったのだろう。


 この連結が緩んで不具合が起きていたと推理し、これを取り外して、外部から力を加えて正常な状態に戻してみる事にした。

以前、ハトメ打ちやポンチ穴あけなどに使う、こういう簡単なプレスを自作していたので




これで試してみた・・・




 プレスしたら、該当チャンネルの症状がなくなって正常に動作するようになった。ただし、効果に持続性があるかどうかは、実はよく解らない。これは今後経時変化の有無を見なければ本当の意味で修理成功とは言えない・・

1度これで組み上げて整備完了としたのだが、チェック漏れだったのか、エフェクトリターンのボリウムも効かない事が分かり、同様の処置をした。さらに、組み込んだ後で、SENDも接触が悪く遅れてない事が発覚、結局都合3回分解組み立てをする羽目になった。

センドやリターンのボリウムは見た目は正常だったので、もしかしたらプレスの効果ではなく、半田不良が再取り付けで修正されたという可能性もなくはないので、念の為全てのボリウムの半田箇所にコテを当てることにした。

これでなんとか全機能普通に使える様になったので、システムに加えることにしてみた。
入力感度は-20dBと民生品で、出力はプロレベルまで振れるので、キーボード等に使うにはちょうどよい感じ。AUXのSEND/RETURNが2系統あるのは小型としてはメリットがある。
気になったのは、モニター用のヘッドフォン端子で、十分な音圧、音質は確保されているのだが、ヒスノイズが大きすぎる。ゲインを上げる上げないに関係なく無音時にシャーッと聞える。カセットテープをノイズリダクションなしで聞いてる感じ。あくまで音が来てるか、などの検聴用なのだろうが、どうもこの機種はこういうものらしい。


その他、バラした時の写真を載せておく・・・

基板のパターンはいかにも手描きで、配線間にダミーのGNDラインを挟むというアナログ基板らしいパターンになっていた。



 オペアンプは uPC4570HA というNECのSIPなチップであった。




 タムラの電源トランスらしい。全般的にいたって普通にきちんと作られている。
部品もしっかりしているので、ボリウムさせ死ななければ長持ちする機種なのだと思う。


 ローランド製の国産品であるが、基板には松下のMマークがあるので、製造は松下なのかもしれない。元々は大阪の企業なので関係が深いのかもしれない・・・




 数年前、ローランドは外資に乗っ取られるような形で外資系企業になってしまった。おそらく、こういう(音響機器としては)普及品が国内で作られることはもはや無いであろう。


おしまい